ステップ1:三脚にカメラを載せる
星空写真は20秒前後シャッターを開けっぱなしにします。手持ちでは絶対に止まりません。三脚は「あった方がいい」ではなく必須の道具です。
- 脚は太い段から順に伸ばし、細い段は最後に使います。中央のエレベーター(センターポール)はできるだけ伸ばさないでください。ここを伸ばすほど揺れます。
- 雲台のロックが緩んでいるとカメラがゆっくりお辞儀します。撮影前に一度、手で軽く押して動かないか確かめます。
- 手ブレ補正(IS / VR / OSS / SR)をOFFにします。三脚に載せた状態では、補正機構が止まっている被写体を「揺れている」と誤検知して逆にブレることがあります。
三脚選びのポイントは三脚の安定性で解説しています。
ステップ2:MFにする
レンズ側面のスイッチ、またはカメラのメニューでフォーカスモードをMF(マニュアルフォーカス)に切り替えます。
星を画角に入れるより先に、必ずここでMFにしてください。AFのまま進めると、次の2つで確実につまずきます。
- 暗すぎてカメラがピントを合わせられず、シャッターがそもそも切れない(AFが合焦するまでレリーズをロックする設定が既定の機種が多い)。
- せっかく合わせたピントが、シャッターボタンを半押しした瞬間にAFで動かされて台無しになる。
ボディ側にAF/MFの切り替えがある機種では、レンズ側とボディ側の両方を確認してください。片方だけMFにしても効かないことがあります。
ステップ3:明るい星を画角の真ん中に入れる
ピント合わせに使う星を1つ決めて、画角のできるだけ中央に入れます。レンズは中央がいちばんよく写るので、周辺の星で合わせるより正確です。
どの星を使うかは難しく考えなくて構いません。その夜、目で見ていちばん明るく見える星で大丈夫です。空に明るい惑星(木星・金星など)が出ていれば、それが最良の相手です。
季節の例:夏なら、こと座のベガ・はくちょう座のデネブ・わし座のアルタイル。冬ならおおいぬ座のシリウスやぎょしゃ座のカペラ。星座が分からなくても「とにかく明るい点」を選べば問題ありません。
拡大しても画面に星が見えないとき
ここが初めての人がいちばん詰まる場所です。星が写らないのではなく、背面モニターに映っていないだけのことがほとんどです。次の順に試してください。
- 露出シミュレーションを切る — 設定した露出をそのまま画面に反映する機能です。これが効いていると、まだ暗い設定のときに画面が真っ暗になります。「露出シミュレーション」「設定効果反映」などの名前でメニューにあります。
- 画面の明るさを上げる — モニター輝度を一時的に上げます。ピントを合わせ終えたら必ず元に戻してください。明るい画面は目の暗順応を壊しますし、周りに他の撮影者がいると強い光は迷惑になります。
- ISO感度を一時的に上げる — 25600など高めまで上げると、画面に映る星がぐっと増えます。これもピント合わせの間だけの措置です。撮影前に必ず戻します。
- それでも見えなければ代わりのものを使う — 遠くの街灯や鉄塔の赤いランプ、月が出ていれば月のふちでも合わせられます。数百メートル以上離れていれば、星と同じ「無限遠」として扱えます。
ステップ4:ピント拡大を押す
背面モニターに映った星を拡大表示します。虫眼鏡マークのボタン、またはボタンに割り当てられた「拡大」機能を押してください。ミラーレスならファインダーの中でも同じことができます。
- 倍率は最大まで上げます(×5〜×10程度)。中途半端な倍率では、ピントが合っているかどうかの差が見えません。
- 拡大位置は十字キーで動かせます。さきほど中央に入れた星に枠を合わせます。
- ピーキング(合焦部分を色で縁取る機能)がある機種は、併用すると分かりやすくなります。
この操作の詳細はピント拡大とピーキングで解説しています。
ステップ5:ピントリングをゆっくり回して星が最小になる所で止める
ここがこのページでいちばん大事な工程です。ピントリングをゆっくり回し、拡大した星がいちばん小さく、いちばん明るい点になる位置で止めます。
星は「小さくなる」と同時に「明るくなる」のが目印です。ボケた星は、光が広がって同時に暗くなっています。いちばん小さくて、いちばん明るい点=合焦と覚えてください。
- 近すぎ
- 前景を入れるならこの辺
- ← 基本はここ(無限遠)
- 行き過ぎ:得るものが無い
ピントリングを回すと、星が最小で最も明るく見える位置があります。そこを通り過ぎると、星も前景も再びぼやけます。
∞マークに合わせるだけではダメな理由
レンズの距離目盛りにある「∞」に合わせれば済みそうに見えますが、これは信用できません。∞マークの位置と実際の無限遠がずれている個体があり、AFレンズの多くは温度変化を吸収するために∞マークを通り越してさらに回るように作られています。だからこそ、拡大して自分の目で確かめる手順が必要になります。
前景を入れたいとき、どちらに外すか
手前に木や岩を入れる構図では「星と前景のどちらに合わせるか」で迷います。判断は単純です。
- ほんのわずかに手前へ外すのはアリです。星をわずかに犠牲にして前景の解像を買う、割に合う取引になります。
- 無限遠より奥へ外すのは絶対にやめてください。星も前景も同時に悪化するだけで、引き換えに得られるものが何もありません。
迷ったときの合言葉は「迷ったらほんのわずかに手前。奥には絶対に外さない」です。
広角レンズなら、無限遠でも前景はけっこう写る
「星に合わせると手前がぼける」と身構える必要は、超広角では実はあまりありません。14mm F2.8で無限遠にピントを置いたとき、手前の被写体がどれくらいボケるかを画素数に換算すると次のようになります。
| 前景までの距離 | ボケの直径 | 画素数に換算すると |
|---|---|---|
| 1m | 0.070mm | 約12画素 |
| 2m | 0.035mm | 約6画素 |
| 3m | 0.023mm | 約4画素 |
| 5m | 0.014mm | 約2.3画素 |
| 10m | 0.007mm | 約1.2画素 |
| 20m | 0.004mm | 1画素以下 |
5mより遠い前景なら、無限遠のままでも実用上まったく問題ありません。「星に合わせると手前がドロドロに溶ける」というのは超広角では誇張で、それを恐れて手前に外す癖がつくと、肝心の星の写りだけが悪くなります。
この話は広角ほどよく効きます。同じ5mの前景でも24mmでは約7画素、35mmでは約15画素とボケが急に大きくなります。35mmを超える画角で手前をしっかり写したい場合は、ピント位置を変える以外の技法(フォーカススタッキングなど)が必要になります。
ステップ6:ピントが決まったら構図を決める
ピントが決まったら、ここから先はピントリングに二度と触りません。構図決めは、カメラの向きと三脚の位置だけで行います。
ピントリングにテープを貼って固定してしまうのが確実です。暗い中で手探りすると、意図せず回してしまいます。マスキングテープなど、粘着が残らないものを使ってください。
- ズームレンズはズームリングも動かさないでください。焦点距離を変えるとピント位置がずれる設計のレンズが多く、せっかく合わせたピントが崩れます。画角を変えたくなったら、ズームしてからピント合わせをやり直します。
- 構図に前景(木・岩・建物)を入れると写真に奥行きが出ます。手前が5mより遠ければ、無限遠のままでも十分に写ります(ステップ5の表を参照)。
気温が下がるとピントは動きます。レンズの金属やガラスが収縮するためで、これは避けられません。1時間おきを目安に、拡大表示でピントを再確認してください。「最初に合わせたから大丈夫」と信じて撮り続けると、後半のカットが全滅していることがあります。
撮影前に星や前景の位置を確かめたいときは、ロケハンシミュレーター(要ログイン)で確認できます。
ステップ7:撮影開始
撮影モードをM(マニュアル)にして、次の3つを設定します。ISO感度を一時的に上げていた場合は、ここで必ず戻してください。
| レンズ | シャッター速度 | 絞り | ISO感度 |
|---|---|---|---|
| 14mm F2.8(フルサイズ) | 20秒 | F2.8(開放) | 3200〜6400 |
| キットレンズ 18-55mm(APS-C) | 10秒 | F3.5(開放) | 6400 |
共通の考え方は「広角端・絞り開放・シャッターは星が流れない限界まで」です。絞りは迷わず開放(いちばん小さいF値)にしてください。星景では明るさが正義です。
シャッター速度の決め方(300ルール)
地球が自転しているため、シャッターを開けすぎると星が線に伸びます。流れずに点として写る限界の秒数は、300 ÷ 35mm換算の焦点距離でおおよそ求められます。
- 14mm(フルサイズ)→ 300 ÷ 14 ≒ 21秒
- 18mm(APS-C、35mm換算27mm)→ 300 ÷ 27 ≒ 11秒
この2つが同じ秒数にならないのは当然です。換算焦点距離が違えば限界も違います。カメラのシャッター速度は10秒・13秒・15秒・20秒…と飛び飛びなので、計算結果を超えない範囲でいちばん近い値を選びます。だから上の表は20秒と10秒になっています。
あなたのレンズで計算する
300ルールの限界値と、カメラで設定しやすい秒数を確認できます。
限界値
実際に設定する値
かつては分子に500を使う「500ルール」が一般的でしたが、画素数の多い今のカメラで等倍表示すると星の流れが見えてしまいます。本ページでは厳しめの300を採用しています。詳しくは500ルールをご覧ください。
撮ったら必ず確認する3点
- ヒストグラムを見る — 背面モニターの見た目は周囲の暗さに影響されて当てになりません。山が左端に張り付いていれば露出不足なので、ISOを上げるか構図を変えます。
- 拡大して星が点か確認する — 全体表示では流れていても分かりません。等倍まで拡大して、星が線になっていないか見てください。線になっていたらシャッター速度を短くします。
- ピントを見直す — 星がふくらんでいたらピントが甘い証拠です。ステップ4に戻ってやり直します。
関連する用語:ヒストグラム・ISOインバリアンス